電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

連れション

「来年の予算に関する米国本社との事業レビューが8月にある。私はどうしてもやりたい新規事業があって、それには君の記者経験が必要だ。承認されれば君を責任者に充てるつもりだから、もう少しガマンしてほしい」

帰り際に支社長に言われました。あちこちに外出し、オフィスにいてもミーティングの連続で忙しい人ですが、一スタッフに過ぎない私の動向を一応、把握しているようです。

外資系、日系を問わず、組織の中で頼れるのは自身の能力のみです。長くはありませんが、決して短くもないこれまでのサラリーマン生活で、安易に他人を信頼してはいけないことを学んできました。

支社長といっても、グローバルで事業を推進する大企業の中にあっては、極東のちっぽけな島国のトップに過ぎません。権力などないに等しく、どこまで信頼できるか分かりません。

ただ、少なくとも私の今後についてはそれなりの影響力を持っている人物です。「もちろん、インドに渡すつもりはない」と断言してくれたこと、私の能力を評価してくれていることを信じるしかありません。

ちなみにこの会話、男子トイレで、いわゆる“連れション”の状態でした。私が用を足しているときに支社長が入ってきて隣に立ち、ジョロジョロ…とやりながら、です。

目の前は壁と小便器ですので、お互いに目も合わせません。そんな状態で私の今後の人生にも大きく影響を与えるような話をしている図を想像してみてください…シュールです。

ただ、支社長は真剣に話してくれたであろうに「インドに渡すつもりはない」と言われた瞬間、「まだふみちゃんに会える」と思ってしまったことは決して言えません。すまんな、私は仕事よりふみちゃんなんだよ。

ふみちゃんはブサイクでも仕事ができる男を好きになってくれないだろうか。