電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

良心

「ずずず、彼は本気だからあんまり意地を張らないほうがいいよ」

昼休みにイギリス人の同僚にコーヒースペースに呼ばれ、こう言われました。“本気”というのはダイレクターが私をインドに飛ばす件です。

彼の席は支社長室に近いため、ドアが開いていると話がよく聞こえます。そして昼前、ダイレクターが支社長に私をインドに行かせる話をしていたそうです。

支社長はなぜ私を行かせるかの理由が理解できないとのことでまったく相手にせず「私情は切り離して考えるように」とまで言ったそうです。

しかし、東京オフィスとして候補者を挙げなければなりません。そして候補者として挙げられ、もし米国本社からの天の声が降ってきたら、支社長でも覆せません。

「別にいいんじゃない。他の元書籍編集部員はみんな家族持ちじゃん。オレは相談する家族もいないし、守るべきものも特にないし、身軽だから適任だと思うよ」

鼻で笑いながら吐き捨てるように言ってしまいました。彼とは気心が知れていることもあり、ここ最近のささくれ立った気持ちをついぶつけてしまいました。

「そんなこと言うなよ。ずずずみたいに誰かが困ってたら無理をしてでも手伝ってくれる人はいないよ。ずずずはうちの会社の数少ない良心なんだよ」

「前にいたロンドンオフィスなんてみんな自分のことだけで、誰かを助けようなんて雰囲気はなかったよ。東京オフィスに来てずずずと一緒に仕事をしてびっくりしたよ」

「○○さんや△△さんも僕が東京オフィスに来たばかりのときからずっと優しくしてくれて、僕は本当に感謝しているんだよ」

彼に八つ当たりをしてしまったことが申し訳なくなりました。プライベートも仕事も上手くいかないのはすべて私の責任であり、彼に当たるのはお門違いです。

それでも怒ることなく心配してくれることをありがたいと思うと同時に恥ずかしくなりました。自分で思っている以上に精神的に追い込まれているのかもしれません。

ロンドンオフィスで一緒に仕事をしていた同僚がニューデリーオフィスにいるので現状を問い合わせてくれているそうです。

私はいつもどおり淡々と過ごすのみです。熱くならず、自棄にならず、とにかく感情をフラットに保ち続けることが重要です。

半沢直樹』はあくまでもドラマであることを常に念頭に置きます。

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