電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

ボブ襲来

「ヘイ、ずずず!久しぶり!」

オフィスで集中していたところ、背後からいきなりスリーパーホールドをかけられました。一瞬だけですが、見事に頸動脈が絞まり、意識が飛びかけました。

こんなことをするヤツは1人しかいません。案の定、一昨年まで東京オフィスで約2年間、一緒に仕事をしていたボブ(仮名)でした。

身長190センチ、体重120キロ、軍隊経験がある筋肉ムキムキの黒人で、二の腕が私の太ももぐらいあり、道で遭遇したら逃げたくなるような男です。

しかし、実際はとても優しい男です。東京オフィスに在籍していた間に私が基礎を手ほどきした生け花に心酔し、花を愛する乙女です。

ただ、力の加減ができないのが玉に瑕で、彼にとってはスキンシップのつもりでも、私にとっては命がけということが多々あります。

一緒に携わった面倒なプロジェクトが完了した際、彼は大喜びで私を抱きかかえ、赤ちゃんにやるようないわゆる“高い高い”をやったのですが、私の頭を思いっきり天井に叩きつけてくれました。

一昨年にサンフランシスコオフィスに異動し、たまに電話やメールでやりとりしていましたが、顔を合わせたのは2年ぶりです。

「先々週に東京オフィスへの出張が決まってたんだけど、びっくりさせようと思って黙ってたんだよ。ところで彼女できたかい?」

2年ぶりに会っていきなりそこですか。できてないと伝えたところ、天を仰ぎながら「うちの奥さんが心配しているんだよ」と。

私に彼女ができないことは海を渡り国際問題に発展しているようです。「ずずずに彼女ができる前にトランプが北朝鮮を攻撃しちゃうよ」という意味不明な心配をしていました。

彼は今月いっぱい東京オフィスにいるそうです。しかし、彼のボスも一緒に来日しているため、結構な過密スケジュールになっています。

1回ぐらいは飲みに行きたいな、と話していましたが、時間があるかどうか。私は人種を問わず男にはモテるのです。