電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

氷河期

もし自分が当事者だったら…と思うと、一瞬で血の気が引き、文字どおりお先真っ暗になってどうしたらよいのか分からず、自棄になっていたでしょう。

だから本来、このようなことを思ってはいけないのですが、それでも思ってしまうのです ― 破綻した旅行会社に入社予定だった内定者がうらやましいな、と。

地方から上京してきた内定者は本来4月末 or 5月末にもらえる予定だった初任給をもらえないため、当面の生活費などを何とか稼がなければならず、本当に大変だと思います。

経営が破綻して内定者が全員、取り消されたと一報を耳にしたときは私も愕然としました。人の一生を台無しにした事態の大きさを理解していないと感じました。

しかし、あくまで報道を見る限りですが、58人の内定者を200社以上が争奪戦を繰り広げているそうです。内定者は全員、こだわらなければ就職できると思います。

中小のメーカーや警備会社からのアプローチが多く、旅行会社を志望していた内定者にとって意に沿わない業界・規模でしょう。「採用してくれるのであればどこでもよい」というわけではないはずです。

新卒で意に沿わない企業に入ってしまった人が短期間で辞めてしまうことは大きな課題になっています。今回、別の企業に入ったとしても「やはり違う」ということで短期間で辞める内定者も出てくるはずです。

そもそも、彼らは厳しい就職活動を耐え抜いて内定を得たわけです。他の企業が欲しがるのは当然のことで、努力不足で内定を得られなかった人とは違うのです。

しかし、就職氷河期世代の私にとってうらやましくて仕方ありません。「時代が違う」「運が悪かった」という言葉で片付けるにはあまりにも差があると感じてしまいます。

あちこちに頭を下げ、企業からは「採用してあげてもいいんだけどねぇ、どうしようかな、うちに入りたい?」という上から目線で対応され、新卒での就職活動は2度と思い出したくありません。

それは中小企業でも、すっかりブラックのイメージがついてしまった外食産業でも同じでした。正社員で採用してもらえればどこでもよかったのです。

ただ、それでも採用されない人があふれました。そのような時代でも内定を得た人がいるわけですから、努力不足と言われてしまえばそれまでです。

本当に努力不足だけが原因なのか、もし彼らがいまの時代に就職活動していたら全員とは言えないまでも大多数は内定を得られたのではないか。

いや、いまの時代に就職活動していたら今度は選ぶようになってしまい、「どこでもよいわけではない」となってやはり就職できないかもしれません。

“たられば”ほど虚しいものはありませんし、世代論にも大きな意味はありません。社会に対して文句を言い続けたところで得られるものは何もありません。

そういう時代だから仕方なかったのか、それにしてはあまりにもひどすぎないか、いやでも仕方ないのか。

意に沿わない就職だとしても、内定者が全員、別の企業に入ることができ、ひとまず生活できるようになれば、と思っています。