電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

ずずず、サラリーマン続けるってよ

「大変ありがたいお話であるにもかかわらず申し訳ありませんが、辞退させていただきます」

メジャーデビューを控えたバンドからのオファーは断りました。悩みに悩んだ結果、やはりどうしてもプロとして音楽を仕事にする決意はできませんでした。

オーディションを受けたときはあくまでもリペアショップのオーナーの顔を立てたお付き合いであり、加入してプロになるつもりはありませんでした。

しかし、オーディション時やその後の連絡などで、かなり心が傾きました。ワールドツアーの話を聞いたときは「加入します!」と返事をする寸前でした。

いまプロとして活躍している学生時代のサークルの同期や先輩、後輩にも連絡を取り、ふだんの生活や業界の現状について話を聞きました。

昨夜のライブには4バンドが出演しており、そのうちの1つが共通の知り合いだったため、そこで会ってもう1度、話しましょうということになっていました。

どのバンドもとても楽しそうに演奏していて、私もすぐにライブをやりたくなりました。誰もが忙しい本業の合間を縫ってリハを繰り返し、本気で遊んでいるのです。

「仕事にしたらここまで楽しそうにできるのか」― 答えは「No!」です。ショービジネスの世界は本当にドロドロしています。私は音楽を嫌いになりたくありません。

音楽は何も考えずに純粋に楽しんでやりたいと思っています。金も人気も名声も不要です。縁合って集まったいまのメンバーと時間をやりくりしながら本気で遊びたいのです。

そう伝えたところ、彼らは予想していたようで「ずずずさんならそう言うと思っていました」とのことでした。「とても楽しそうに弾いていたのが印象的だった」とも。

メジャーデビューアルバムに私のベースのフィーリングがほしいとのことで、サポートとして3曲、弾くことになりました。正式メンバーはしばらく入れないそうです。

そこまでしてもらうのは申し訳ないのですが、せっかくの申し出なのでそれは受けさせてもらうことにしました。華々しいメジャーデビューアルバムに私の名前が載ります。

すごく長い間、悩んでいた気分ですが、実際には1週間です。久しぶりに本気で人生を考えました。何歳になってもターニングポイントは訪れるものです。

そして今日も家で1人、ヘッドホンをつけて黙々とベースを弾いています。