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電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

続・メジャーデビューへの誘い

「デモ音源聞いて気に入ったから早速、音合わせのリハに参加してほしいって言ってるんだけど、来週の火曜日の夜とか空いてない?」

マテ!

展開早すぎ。しかもリハに参加とは、リペアショップのオーナーは何と伝えたのか。まさか「本人もノリノリでぜひ参加したいと言っている」とでも伝えたのではなかろうか。

私はプロになるつもりはないのです。お金が絡むと自分のやりたい音楽がどうしてもできなくなりますし、ショービジネスの世界ほどドロドロしたところはありませんから。

それに他にもあちこちのつてをたどってベーシストに声をかけているでしょうし、メジャーデビューと聞いたら大喜びする人がいるはずです。

私は譜面が読めませんし、独創的なアドリブも弾けませんし、プロとしてやっていくには実力が足りていないと思っています。どれだけシビアな世界かは分かっているつもりです。

受話器の向こうで断ろうとしている私の気持ちを読んだのか、オーナーはたたみかけてきます。

「あいつらがこれまでライブバーやクラブ、ストリートでがんばってきたのを見ていて、やっとつかんだチャンスを応援してやりたいんだよ」

分かる、分かるよ。メジャーデビュー前の下積みで苦労したミュージシャンはいっぱい知っているよ。でも、私より上手い人はいるはずだよ。

「オレはずずずさんがあのバンドに加入したらものすごく良くなると思ってるんだよ。リハに行ってくれたらこれからメンテナンスは永久無料にするからさ」

手を打とう!

「加入する」とは言っていないぞ。「リハに参加する」と言っただけだぞ。気に入られて正式加入を打診されても会社は辞めないぞ。

来週の火曜日、メジャーデビューを控えたバンドのリハに参加してきます。ふと気づいたらホワイトデーですが、予定などないので無問題です…。