電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

キャリアとスキル

「大阪に異動の内示が出たよ」― 昨夜の帰り、横浜駅で新聞記者時代の同期にばったり会いました。何か話したそうだったので飲みに誘ってみたところ、異動の話が出てきました。

私がいた新聞社は地方紙です。東京と大阪の2大経済圏を無視することはできないので支社を置いていますが、主戦場は地元の県です。東京はともかく大阪への異動は社内の主流から外れたことを意味します。

「俺も転職しようかな。色々と教えてもらいたいわ」と言っていましたが、断固として反対しました。新聞記者はつぶしが利かない仕事で、転職先がほとんどありません。

高倍率の採用試験を突破したので優秀ですし、彼は仕事ができる男なので、記者とまったく関係ない他の仕事もやってみれば無難にこなせると思います。

ただ、30歳を超えてからの大きなキャリアチェンジは相当難しいはずです。例えば、彼が人事や経理、マーケ、経営企画などに応募して採用されるとは思えません。

周りにはそれらのキャリアを積んできた求職者がいっぱいいるわけで、経験者を差し置いてでも未経験の彼を採用する理由はなかなか見つかりません。

それに新聞記者というとイメージが強烈すぎて採用に二の足を踏んでしまう人が多いのではないかと思います。すごく扱いにくそうですし、実際に扱いにくいですし。

元検事でいまは小さい貿易会社で事務をやっているという50代の女性の知り合いがいます。東大法学部在学中に旧司法試験を突破したエリートです。

しかし、40代後半で乳がんを発症し、検事のような超激務の仕事を続けられるわけもなく、退官後に知人のつてでいまの会社に転職したそうです。

「司法試験を突破して得られる法律家の資格ってものすごいものだけど、その世界でしか通用しないんだよね」

彼女が言っていたことをよく覚えています。当然、弁護士資格を得ているので弁護士になれるのですが、弁護士業務に耐えられるだけの体力がありません。

企業の法務部などで活躍できそうですが、民間企業での経験がない間もなく50代になろうという女性を正社員として雇う企業は決して多くないでしょう。

法務部などがない中小企業はぜひ欲しいと思うのでしょうけど、あまりにも能力が高すぎることと、能力に見合った給料を払えないことに尻込みしてしてしまうはずです。

彼女は決して高給を望んでいたわけではなく、ごく普通の生活を送れる額であれば構わなかったそうなのですが、そう言われても雇う側は気が引けます。

結果として、法律にものすごく詳しい普通の人になったわけです。身体や年齢などを考慮して、間もなく50歳を迎える退官後のいまからできそうなことを必死に探したそうです。

しかし、なかなか見つからず、いまの会社に入るまでの少しの間、スーパーでレジ打ちをしていたそうです。これまでのスキルやキャリアをまったく活かしていません。

スーパーのレジ打ちがくだらないというわけではありませんが、いくらなんでも旧司法試験を突破した人がやるのはいかがなものかと思います。

ここ数年間でキャリアやスキルという言葉をよく耳にするようになりましたが、本当の意味でのキャリアやスキルとはどのようなものなのか、私にはいまだによく分かりません。

「大阪でスクープ連発して戻ってきてくれよ。お前ならできるはずだし」― 気休めなどではなく本心ですし、彼なら実際にすぐ戻ってくると思っています。

私もまだ目先のことだけに全力で取り組んでいてもよいかと考えていましたが、もう少し先のことを考えなければならなくなってきたようです。