続・ヘッドハンター
「聞きましたよ、彼の解任の件」― 席に座ってNDAにサインした直後、ヘッドハンターが発したひと言で背筋に悪寒が走りました。オフィス内にヘッドハンターの内通者がいるとしか考えられません。
実は13日の金曜日、日本支社長の解任が発表されました。しかも今月末で去り、2月1日から新しい支社長が着任するという、急転直下の事態です。
発表後に部署のメンバーが集められ、ダイレクターから説明があったのですが、そもそもダイレクターが知ったのも前日だったそうです。誰にとっても寝耳に水です。
余談ですが、外資系は大きな影響がある発表を金曜日の15時以降にしがちです。すぐに定時なのでその日の仕事は終わりですし、土日にゆっくり考えさせて落ち着かせるためです。
私が解雇通告を受けたのも金曜日でしたし、その日の15時に社内にメールが一斉送信されました。翌日も普通に仕事をするなど無理なので、土日を挟むというのは理にかなっていると経験者は思います。
そして、冒頭のひと言に戻ります。前日の15時に社内で発表されたことを、部外者であるヘッドハンターがなぜ知っているのか?
元新聞記者ですから、情報収集の難しさはよく分かっています。だからこそ、このヘッドハンターがどれだけ凄腕か実感しましたし、恐怖すら覚えたわけです。
昨日、ヘッドハンターに会ってきました。横浜ランドマークタワーの70階にあるロイヤルパークホテルのスカイラウンジで17時でした。20時前にジャズライブが始まるため、2時間弱で終了です。
提示された会社は全世界に展開している情報企業で、弊社の競合のうちの1社でした。詳しく書けませんが、私は実作業をするのではなく、実作業者となる10人の部下の取りまとめだそうです。
ヘッドハンターであれば競業避止義務を理解しているはずです。それでも提示してきたということは揉めない確証があるのだろうと思います。
もしくは、日本支社長の解任のどさくさに紛れ込むことを考えているのかもしれません。社員である私が知らないことを知っているような気がして怖くなりました。
返事は1週間後です。私は独身ですから家族に相談する必要もなく、1~2日で答えを求められると思っていたので、意外と時間をくれて驚きました。
ヘッドハンティングなど映画やドラマの中だけだと思っていました。ニュースになるような大企業のトップの交代劇の裏ではヘッドハンターが暗躍しているのかもしれません。
複数社を渡り歩いてキャリアを積んでいく欧米ではヘッドハンターが珍しくありませんが、何だかんだで終身雇用が根強い日本では珍しい存在でしょう。
転職はずいぶんと一般的になりました。ただ、日本ではせいぜい2回の転職、つまり3社目ぐらいで打ち止め、それ以上の転職回数だと本人に難ありと見られがちです。
しかし、欧米では4社目、5社目が珍しくありません。根本的な雇用制度が違うので単純に比較することはできませんが、日本の働き方はこれから欧米に近づいていくのだろうと考えています。
どこへいってもやっていける、あちこちからスカウトがくる、1人でも勝負できるようなスキルを身につけていかなければなりません。勉強あるのみです。