電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

背幅

読んで字の如く「背表紙の幅」です。当たり前ですが、ページ数や紙の厚さによって書籍ごとに異なります。この仕事を始めて思ったのが「紙ってこんなにたくさん種類あるのか!」でした。紙についてはいつも印刷会社に教えてもらっています。

カバーは背幅に合わせて正しく制作しないと製本時に事故が起こります。例えば、制作した書籍の背幅が15ミリであるのに、カバーの背幅が10ミリで制作されていたら、きれいに巻くことができません。

無理やり巻こうとすれば、表紙や裏表紙に当たる部分(表1、表4)がずれます。カバーを巻いたときに折り返す部分(そで)がおかしい位置で折られます。そもそも、背表紙に入れた書籍のタイトルなどが不格好になります。

背幅を正確に算出するために束見本(つかみほん)を作ります。束見本とは実際に使用する紙とページ数で、実際の書籍とまったく同様に作られたものです。ただし、本文などは入稿していないため中はすべて白紙です。

私は背幅のことをよく束幅と言ってしまいます。カバーと表紙ほど違いがなく、ほとんど同じ意味ですし、印刷会社の営業さんも気を利かせて理解してくれるのですが、気をつけようといつも思っています…でも間違える。

今回の書籍の背幅ですが、印刷会社に確認したところ7ミリと言われました。特に深く考えず、デザイナーさんに伝えてデータを修正してもらいました。上がってきたものを見ました。

薄っ!

今回の書籍はA5判(148×210)です。この判型で7ミリは見るからに貧弱です。いわゆるムックと同じようなものになってしまいます。まがりなりにも“書籍”なのですから、さすがにもう少し厚くしたい。

まず印刷会社の営業さんに電話して、この段階で紙を変更できるか、せめて10ミリはほしいのでそのための紙に変更するといくら値段が上がるか、を確認です。3年目の若い女性なのですが本当に優秀で、その場で「変更可、1万円値上げ」と教えてくれました。

1万円ぐらいであれば何とかなりそうなので、あっちの費用をこっちに付け替えて、費目をいじって中身は変えずに見た目を変えて…で、1万円を捻出しました。予算上はまったく問題なく、マネージャーも承認済みです。

都内はいま冷たい雨が降っています。天気予報を見ていなかったため、雨が降ることやここまで寒くなることを知りませんでした。紙問題は30分ぐらいで一気に片付けたため、外でのんびりタバコを吸っていたところ、目の前を若いカップルが通りかかりました。

女:「寒いからくっついちゃおーっと」
男:「やめろよ、ほら見てるぞ」
女:「照れちゃってかわいい」

……

………お、お前ら、○んでしまえー!ハァハァ…。

いいもん、ずずずの人生は書籍に捧げたんだもん…寂しくなんかないんだもん…うそです、人生を書籍に捧げたわけではありません。恵まれないブサイクに愛の手を優しく差し出してくれる天使からの連絡をお待ち申し上げております。