電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

奥付への記載

奥付に弊社の社名が載ることになりました。販売を担当する出版社に対して「これだけがんばってくれたのに何も痕跡がないのは心苦しい」と著者が言ってくれたからです。弊社は「制作」として記載されます。

ただ、まえがきに私の名前を載せることについては、販売委託先が頑として首を縦に振りませんでした。社名が記載され、弊社がこの書籍に関わったことが伝わるだけで、私にとっては十分です。

著者がまえがきで「○○氏や○○氏の多大な助力がなければ本書が世に出ることはなかったであろう。この場を借りて皆さま方に謝意を表したい」と書いていて、ここに私の名前を載せたいと言ってくれていたのです。

しかし、業界関係者がこれを見ると「なぜ?」と思うはずです。弊社は制作会社ではなく版元ですから、制作したのになぜ自社で販売しないのか、と思われるはずで、販売委託先や弊社に問い合わせがくる可能性もあります。

奥付に記載されるだけでも業界に疑念が広がりますが、まえがきに「○○社のずずず氏」とまで載ると、これはいったいどういう仕組みになっているのだ、何か裏の事情があるのではないか、と勘繰る関係者がいてもおかしくありません。

しかも著者は、販売委託先についてはまえがきで触れないと言っているのです。「実際の編集・制作過程でお世話になったのはずずずさんだから」と著者が頑固に主張し、それはとてもありがたいことなのですが、販売委託先に触れないのは不自然です。

弊社の書籍出版事業の日本市場からの完全撤退は極秘事項です。もし明るみに出れば「あそこはそんなに経営が苦しいのか」と、利益率が良くない事業をクローズするだけなのに、すべての事業が危ないと思われかねません。

販売委託先にはさすがに正直に言わないといけないため、今回、秘密保持契約(NDA)を結んでいます。販売委託先も弊社も、今回の制作~刊行、販売の仕組みについては、とにかく触れられたくなく、弊社の情報はやぶ蛇になりかねないのです。

実は、制作の裏側でダイレクターやマネージャーをも巻き込んで“大人の話し合い”が何度か繰り返されていました。しかし、最終的に著者の意向を最優先することになり、何とか奥付だけには弊社の社名を記載することで落ち着いたのです。

「文字・活字文化の振興」「書籍・雑誌は基本的な文化資産」「自国の文化水準の維持」などと偉そうなことをいっても、出版社は営利企業であり、書籍出版はビジネスです。裏では“いろいろ”あるのです。

私の望みはゆるゆると書籍を作り続けていくことだけなのですが、シンプルなようで、実はものすごい高望みなのかもしれません。