電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

引き留め

「待て。君に辞められると来年からの計画がやり直しになる。人を減らすのはまだ決定事項ではなく、切らなくても済むようにいま考えているところだから」― 2か月前は辞めろと言ったくせに今度は引き留めるとは。

夏休み明けのダイレクターが出社したところをつかまえて「Aさん(仮名)を切るのであれば私が辞めます」と伝えました。バリ島に行っていたらしいダイレクターの頭の中はまだバカンスモードです。最初は何を言っているのか分からないようでした。

「ヘッドカウントの帳尻が合えば良いというわけではなく、君だからこそお願いしたいと思っている。仮に君が辞めたとしてもAさんをそのままスライドさせるつもりはない。君とAさんの適性は違う」

そうきましたか。これでは私が単なる辞め損になってしまいます。切らなくても済むように調整しているというダイレクターの言葉を信じて、もう少し様子を見ることにします。

それに今朝は少し自暴自棄モードだったので、ダイレクターに即決されなくて良かったかもしれません。辞めるにしても、勢いで決めてしまうより、もう少し冷静な状態で判断する必要があります。

昨夜、バンドメンバーとスタジオ後に気持ち良く飲んで、良い気分で眠ろうと思ったところで、ふみちゃんに関することで嫌なことがありました。何かされたというわけではありませんが、とにかく嫌なことです。

いまの会社にいる限り常にふみちゃんのことが付きまとうわけですから、もう辞めるしかないと瞬間的に我を失い、そのままの勢いでダイレクターに切り出してしまいました。完全にやけっぱちです。

いつか時間が解決してくれる ― 頭では分かります。しかし、数年前の嫌なことはいまだに消えていませんし、「いつか」とはいったいいつなんだと叫び出したくなります。誰のせいでもなく、すべて自分のせいなのですが。