電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

美人、来襲す(その2)

友人から別れたという連絡をもらった1週間後、彼女から連絡をもらいました。「振られちゃった…。ずずずさん、慰めてください。飲みに行きませんか?」― キタ!チャンス到来!ついにブサイクにも春がきた!

私はもちろん下心アリアリでした。弱っているところにつけ込むのは卑怯ですが、この際、綺麗事など言っていられません。私のようなブサイクがこんな美人をモノにするには手段を選んでいる場合ではないのです。

待ち合わせ場所に行くと、周囲とは明らかに違うオーラを醸し出している美人が目に入りました。道行く人々がチラチラ見ているのが分かります。ナンパしようとチャラ男が彼女に声をかけたのと、彼女が私を見つけたのがほぼ同時でした。

駆け寄る彼女とチャラ男の舌打ちを見ながら、優越感に浸っていました。「チャラ男くん、男は見た目ではなく、中身なのだよ。いまからでも遅くないからそれを学びたまえ」と思ったものです。

予約したお店に着き、個室に通されました。そう、個室です、下心アリアリです。しかし、彼女はいきなり芋焼酎をロックで注文し、あっという間に何杯も空けていきます。「男らしい」― 彼女の飲みっぷりを目にして、直感的にそう思ったのですが、やはり直感は当たるといまはしみじみ実感しています。

4~5杯を一気に空けたところで、実はOLではなく水商売であると、彼女が泣きながら話しました。嘘は良くないかもしれませんが、友人はそういうことをあまり気にしない、器の大きいヤツだと思っていたのですが。

男にとって、自分の彼女が水商売というのは、正直言って嬉しいものではないでしょう。職業に貴賎はありません。ただ、自分の彼女が酔っ払いに肩を抱かれたり、手を握られたり、太ももを触られたりするのを黙って見ていられる男はいないはずです。

ただ、人にはそれぞれ事情があります。新聞記者時代、自分でもさまざまな人を見てきましたし、社会部の同僚から耳を覆いたくなるような人間模様を聞きました。水商売は短時間でそれなりのお金を得られる分、本当に大変です。好きでやっている女性などいません。

彼女にも何か理由があるのだろうと思いましたが、それを根掘り葉掘り聞くのは野暮というものです。今日はとりあえず聞き役に徹して、すべて吐き出させるほうがよいのだろうと思い、下心は消しました。

ひと通り吐き出した後、彼女から話を振ってきました。「私、どんなところで働いていると思います?」。私はごくふつうのキャバクラ、わざわざ聞いてくるということはもう少し過激なお触りアリのお店かと思いました。しかし、答えは斜め上すぎました。

「ニューハーフクラブなの」

(つづく)