電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

謙虚な姿勢

記者は自らの足を使って動き回ります。待っていてもネタが勝手にやって来てくれることなどありませんし、取材とはあくまでもこちらがお願いして「お話しいただく」のです。暑かろうが寒かろうが、雨だろうが雪だろうが、相手の都合に合わせて、こちらが相手先に出向くのは当然のことです。

出版社に転職して、色々なことを外注するようになりました。自分である程度の予算を持って、印刷会社はもちろん、先日少し紹介した編プロやデザイナーなどに業務を依頼する、要は発注元になったわけですが、いくつか戸惑うことがあります。その1つが「打ち合わせの日時をこちらに任せられる」ということです。

外注先の方に打ち合わせをお願いすると「ご都合の良い日時をご指定ください。その日時にうかがいます」と言われます。これは今まで自分が言ってきたセリフです。それが今度は、こちらの都合に合わせてくれるとは、何とも居心地の悪さを感じます。

また、こちらまで足を運んでくれるということも地味に戸惑っています。あちらとしては当たり前の対応なのだろうと思いますが、わざわざ来てもらう、しかもこちらが指定した日時に、ということにどうしても申し訳なさを感じてしまいます。いまだに慣れません。

先日、印刷会社の営業さんに見積もりをお願いする際、試しに「こちらからうかがいます」と言ってみたら「いえいえ、とんでもございません!」と血相を変えてお断りされてしまいました。あちらの職場環境や使用機材、体制などを見てみたかったですし、外に出る良い機会だと思ったのですが。

以前、私が編プロに打ち合わせに出向いて帰ってきた際、「ずずずさん、わざわざ編プロに行ったんですか!何で向こうが来ないんですか?」と言い放った雑誌チームのメンバーがいます。彼女は版元の編集者しか経験しておらず、編プロを単なる下請けとしか見ていないふしがあります。現実的に考えて編プロなしでいまの出版業界は立ち行かないのですから、もっと大切にしないといけないのに。

謙虚な姿勢というものはとても大切なことです。自分だけの裁量で使える予算を持っているといっても、お金を払うのは会社であって、自分自身は何者でもなく、決して偉いわけではありません。それに、あくまでもこちらが「お願いしている」わけですから。