電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

続々・記者と編集者

記者は毎日、外に出ますが、編集者は滅多に出ず、外部の人と会うことも少ない。自分で文章を書かないのですから取材に行くこともなく、当たり前のことなのですが、記者上がりの私にとってはこれも大きなカルチャーショックでした。びっくりするほど外に出ません。

もちろん、打ち合わせで著者やデザイナーの下へ出向くこともありますし、調べものがあって図書館に行くことなどはあります。しかし、基本的には完全にデスクワークです。出社してメールチェックして、ゲラの確認を始めて、ミーティングに出て、ゲラを確認して、たまに来客があって、またゲラの確認に戻って…と、1日が社内で完結します。

ひと口に「編集者」といっても、携わる媒体によって動き方が異なります。例えば先日まで放送していたドラマ『重版出来!』で描かれたコミック誌、しかも週刊となると、もっとバタバタしていると思います。

私が携わっているのは書籍、中でもある特定の分野に特化した専門書と呼ばれるもので、1冊約300~400ページぐらいのものです。著者が脱稿(原稿を書き上げること)し、原稿整理を始めてから、誌面デザイン、組版、初校、再校、念校、目次・索引の制作と進み、大体3~4か月で1冊を作り上げます。

小難しい内容の文章を毎日、数十ページも読み、疑問点はその都度調べて、読んでいる途中で引っかかったときには読みやすくなるように考えて…ということを繰り返していると、あっと言う間に時間が過ぎていきます。

校了直前で追い込まれ、集中しているときなど、帰るころになって「そういえば今日、誰とも会話してないかも…」ということだってあります。人に会って話を聞いてなんぼの新聞記者時代からは考えられません。

デスクワークですから、原則として連絡もすべてメールです。ものすごく急いでいるときは電話ですが、それ以外はメールです。デスクワークであれば、メールもすぐにチェックできます。

「集中している同僚に話しかけにくく、隣にいるのにメールする」ということも今となっては何とも思いませんが、この仕事を始めたころは、隣に座っているのにわざわざメールしてくることに驚きました。「も、もしかして話したくないぐらい嫌われてる?」とさえ思いました。

新聞記者時代は直接話すか電話が基本です。外を出歩いていることが多いので、頻繁にメールなど見られません。もちろん、文字で記録として残しておきたい場合はメールしますが、そんな悠長なことを言っていられない、1分1秒を争う事態に頻繁に直面するのが日刊紙の記者です。メールよりも電話で会話するほうが圧倒的に多かったのです。

今でこそ軽いノートPCも激安になり、タブレットなども販売され、無料のWi-Fiスポットもあちこちに整備されるなど、外でのインターネットへの接続環境も激変していますが、私が新聞記者をやっていたころはまだそれほどではありませんでしたし。

総務や人事、経理など、いわゆるバックオフィスの方々にとっては当たり前なのかもしれませんが、私にとっては“衝撃的”と言っても過言ではないぐらいの変化でした。正直言って、いまだに慣れません。「もしかしたら自分は記者のほうが向いているのかも…」と思う毎日です。