電車の中の恋人

酒とタバコと電気ベースと料理とキャリア…まあいろいろ

汚文字判読能力

編集者は汚文字判読能力が高い。編集者ではない人、例えば手書きの請求書が届く経理や手書きの赤字が入った広告原稿を受け取る営業が判読できないものでも、編集者であれば瞬殺です。彼らはよく「これ何て書いてあるか分かる?」と編集部にやってきますが、ほとんどが一瞬で判読できるレベルの汚文字です。

いまのご時世、ゲラはPDFですが、校正は紙で行う著者がほとんどです。まれに折れ線ツールやコメント機能を使ってPDF上でキレイに赤字を入れてくれる著者もいますが、出力紙に直接、手書きで赤字を入れて戻してくる著者が大多数です。

当然、すべての著者が達筆ということなどあるわけもなく、汚文字のほうが圧倒的に多いと思います。私もこれまでかなりの著者と仕事をしてきましたが、美文字だった方は片手で数えられるぐらいです。指示があちこちに飛んでどれをどこに反映すればよいのか分からないこともあります。例えば、下記のようなものです。

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これでも汚文字レベルとしてはかわいいもの、これは汚文字よりも指示が分かりにくいタイプのものですが、30~40ページぐらいであれば1人でも1日で整理できます。こういうことを日々、繰り返しているため、編集者の汚文字判読能力が磨かれるわけです。どんなに強烈なくせ字でも、乱暴に書き殴った文字でも、読めないものはないと言っても過言ではありません。

しかし、昨日、同僚のところに戻ってきた赤字はすごかった…。同僚もかなりの汚文字判読能力を身に付けていますが、その同僚をもってしても判読できない箇所が多数で、私も聞かれた5箇所のうち2箇所は分かりませんでした。3箇所は分かったということではありますが、敗北感に打ちのめされています。

最終的には編集部総出で判読できましたが、1ページ整理するだけでもこんなに時間と労力がかかるものがあと残り25ページ分あります。同僚とアシスタント2名の計3名で取りかかったとしても、DTPに渡せる状態まで整理するのに2~3日かかりそうな雰囲気です。

文章の途中など前後の文脈から判断できるような箇所であればまだよいのですが、そこまでと話題が変わる章や節の冒頭にこれをやられるとかなり厳しいです。それに関する記述が後半にならないと出てこないことが多く、そこまで集中して読み進めなければなりません。

ま た、赤字が入った出力紙そのものであればまだ判読しやすいのですが、スキャンしてPDFで送られるともう涙目です。そして、そういう著者は大抵、スキャン してPDFで送ってきます。「忙しくて時間がない→校正が遅れる→急いで書き殴る→発送している時間などない→スキャンしてPDFをメールで」というサイ クルに陥っているので当然といえば当然ですが。

もちろん、字が下手でもまったく問題ありません。ただ、もう少し丁寧に書いてもらえると編集者は小躍りして喜びます。「ここは何て書いてあるのでしょうか」と聞くなんて失礼な気がして、小心者の私にはできないのですよ…。

そういえば、前に電車の中でチラ見してしまった彼女のスケジュール帳の文字、見た目にぴったりのかわゆい文字でした。あんな文字で赤字をもらえたら仕事がはかどりすぎてあっと言う間に終わってしまうと思います。

前の席から同僚のうなり声が聞こえてきます。これは午後も編集部総出の予感。ちなみに、自分の担当じゃないからクイズみたいでちょっぴり楽しんでいるのは秘密です。