電車の中の恋人

通勤電車で一緒になる女性に恋して散ったブサメンの日常

編集者のパートナー探し

今日は原稿が届く予定だったのですが、著者から「すみません、今日は…」と連絡があり、ぽっかり空いてしまったので、東京ビッグサイトにコンテンツ東京2016を見に行ってきました。書籍の制作をお願いできそうな会社や、カバーデザインを任せられそうなグラフィックデザイナーを発掘したいと思っていたのです。

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新橋まで出て、ゆりかもめに揺られてレインボーブリッジを渡り、国際展示場正門前までゆるゆると。そういえば、ゆりかもめに乗るのは新卒時の就職活動でお台場に来て以来かも。お台場なんて特に何があるわけでもなく、男が1人で来るようなところではありません。

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書籍を作っているのは出版社の編集者―これは正しくもあり、間違いでもあります。

出版社の編集者の仕事は、いま世間で問題になっていることや話題になっていることをさまざまな視点から眺め、書籍として売れそうな企画を立て、社内で企画を通し、詳しそうな人を探して執筆を依頼して原稿を書いてもらい、原稿チェックなどの編集作業を経て1冊の書籍に作り上げることです。

これ以外にもデザイナーを手配したり、印刷会社と紙の仕様などを調整したり、刊行後のプロモーション活動について営業とやりとりしたり、出版社の編集者は書籍の制作から販売に関することまで、書籍の全行程に携わります。私の仕事はこれに当たります。

一方、世間には「編集プロダクション」という業種の会社があります。略して「編プロ」、「制作会社」と呼ばれたりすることもあります。編プロは、出版社から依頼を受けて、書籍の制作業務のみを担当します。原稿を出版社から受け取り、編集して、印刷所に入稿できる状態にまで作り上げて納品するのが主な仕事です。その意味では、書籍を作っているのは編プロの編集者ともいえるわけです。

なぜこのような仕事があるのか、なぜ出版社の編集者が編集しないのか、なぜ外注するのか。それは出版社の編集者の手が回らないからです。それでは、なぜ手が回らないのに外注してまで刊行するのか。それは出版不況に関係しています。

紙媒体の衰退は今に始まったことではありません。弊社もご多分に漏れず売り上げが良いとは決していえませんし、他社で編集者をしている学生時代の先輩や同期にたまに会って話を聞くと、やはり右肩下がりだそうです。出版社の倒産もよく耳にします。

1タイトルごとの売り上げが少ないのであればいっぱい出せ―これが出版社の現状です。ものすごく極端な例えですが、これまでは初版1万部で1年に1タイトル刊行していたものを、初版2000部で1年に5タイトル刊行すれば、商品数が5倍になります。1タイトルごとの売り上げが少なくともそれが5倍になれば何とかなる、という理屈です。

出版不況と言われつつも新刊の刊行点数が年々、増加しているのはこういう仕組みです。似たような内容でも著者を変えて、とっかえひっかえ新刊を刊行し続けて何とか食いつないでいる、自転車操業のような出版社がたくさんあるのです。

出版社の編集者にとっては単純計算で仕事量が5倍になります。さまざまな事務手続きなどを考慮すると実際は5倍以上です。そこで制作業務のみを編プロに外注することになり、またそれを受ける編プロという業種が生まれたわけです。書籍の企画立案や著者とのやりとり、刊行後の販売などは外注できません。

このようなやり方では当然、1タイトルごとの質が下がります。これまで1タイトルだけに集中していた意識が5タイトルに分散されるのですから当たり前。また、せっかく自分で立てた企画であれば、最後まで自分で担当したいのが本心です。他者の手に委ねるのは正直言って悔しいですし、著者にも申し訳ないと思います。

しかし、すべてを1人でやろうとするとパンクしてしまうため、外注せざるを得ません。そこで、外注するのであればせめて、私の意図などを正しく理解し、きちんと作り上げてくれる編プロに任せたいと思います。編プロとは要するに出版社の下請けですが、私は下請けなどと考えず、信頼できるパートナーだと考えています。

ただ、信頼できるパートナー探しがなかなか難しい。結婚や恋愛と同じでなかなか見つかりません。良い仕事をしてくれる編プロはあるのですが、当然のことながら対価も高い。良い仕事に対して相応の対価を払うのは当たり前ですが、編集者にも予算があります。

私に与えられている予算は他社の編集者よりも恵まれていると思いますが、私が求めるレベルをクリアしてくれる編プロに丸々お願いするには足りません。せっかく外注するのであればすべてお任せしたいですし、受ける側もそのほうがやりやすいと思うのですが、外注する業務量を限定して、私のほうでもある程度の作業をすることで費用を抑えています。

コンテンツ東京2016は、そのような会社やフリーのデザイナーなどによる展示会で、信頼できるパートナーを探しに行ったのですが、成果はイマイチでした。良さそうなところが1社あって話を少し聞いてみたのですが、やはり金額が折り合わず。そこが特に高かったというわけではなく、体制や実績を聞く限り、いたって妥当な金額でしたが、私のお財布ではちょっと…。

湯水のように使える予算を与えられれば誰でも良いものを作れます。限られた予算の中でいかに良いものを作っていくか。これは編集者に限ったことではなく、働く人々すべてに共通することでしょう。出版社の編集者というとクリエイティブな仕事でカッコイイというイメージをもたれがちですが、実際は1円単位のお金の計算に悩まされる地味な仕事なのです。