スカウト
「ずずずさんにスカウトが届きました!」
昨年の夏、書籍出版事業の廃止と解雇宣告を受け、エージェントへの連絡から無料の転職サイトへの登録まで、ありとあらゆる手を打ちました。
結果的にはウェブ媒体への異動で現職に残っているわけですが、またいつ何が起こるか分からないため、転職サイトへの登録はママにしてあります。
しかし、転職はやはりエージェントに限ります。無料の転職サイトは募集企業も応募者も“下手な鉄砲も数打ちゃ当たる”というスタンスです。
私にもかなりのスカウトが届くのですが、業種は大体、決まっていて、
・塾講師
・タクシーの運転手
・外壁塗装の営業
・パチンコ店のスタッフ
ばかりです。
“登録してあるずずずさんのキャリアを拝見し、当社で活躍していただけると思い、ご連絡しました”と名前の部分だけを変えたと思われるテンプレートメールが大量に届きます。
新聞記者と編集者のキャリアがなぜタクシーの運転手やパチンコ店のスタッフに活かせるのか、一度でよいから問い詰めてみたいところです。
件名に社名が入っているのでそのテのメールはごみ箱に直行ですが、今日はぴくりと反応してしまうスカウトが届き、つい開いてしまいました。
「有限会社プレステージ様からスカウトが届きました!」
「まさか?」と思いましたが、それなりにありそうな社名です。職種は広報、撮影アシスタント、総務となっています。ホームページを開いてみました。
いつも大変お世話になっております!
はい、AVメーカーです。『働くオンナ』シリーズを初めて見たときは衝撃を受けました。「こ、こんなかわいい子がAVに出るなんてすげーな!」と。
真面目な話、エロというものはとても優良なビジネスの1つです。VHSとベータによる「ビデオ戦争」と呼ばれるビデオの規格争いにケリをつけたのはAVという一説があるほどです。
求人情報を見てみると、給料は決して悪くない水準ですし、福利厚生もしっかりしているようです。文面からはとても優良企業のように見えます。
マテ!
ほんの少しだけ気持ちがぐらつきましたが、趣味と実益を兼ねると良いことなどありません。しかも凝り性の私がAV業界に入ろうものなら大変なことになるのが目に見えています。
それにしても、AVメーカーが転職サイトに求人を出す、さらにスカウトまで送るということに時代は変わったとしみじみ思います。
子どもが将来就きたい職業にキャバ嬢がランクインされたと聞いたときに衝撃を受けましたが、いずれAV女優がランクインするときがくるのかもしれません。
ちなみにスカウトに応募していませんので、悪しからず。
裏口
お昼ごはんを食べに外に出たら、ふみちゃんらしき女性を見かけました。すごく離れていたのと、少し度を下げたPC用メガネだったので、確実に本人かどうかは分かりませんが。
ふみちゃんとよく似た背格好や髪型の女性を見かけるたび、無意識に隠れようとするか俯いて顔を隠すようになってしまいました。気づいたら猫背になっていることも増えました。
イケメンでなくとも、せめてもう少し普通の顔だったら、と思うのですが、こればかりはどうしようもありません。整形しようとまでは思いませんし。
メジャーデビューしたら2ちゃんねるなどで「うはっ、ベースは上手いのにすげーブサイク」「人前に出られる神経が理解できん」などと叩かれるかもしれません。
あらためて気づきましたが、メジャーデビューしたら多くの人の目に触れることになるわけです。テレビに出ることなどないでしょうけど、数百人規模のライブも珍しくなくなるでしょう。
ふみちゃんが働いていると思われるオフィスビルを眺めながら裏口でタバコを吸っていると、自分はやはり日の当たらないマイナー路線のほうが合っているのだろうと思います。
いっそのこと、ふみちゃんへの想いも一緒に断裁してもらいたいものですが、これだけは自分でしかケリをつけることができません。苦悩の日々は続きます。